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「イイダ傘店のデザイン」と胃腸炎

先月4/20に書籍「イイダ傘店のデザイン」が発売された。

3年くらい前から出版社の方とは話をしていたのだが、お互い特に大きな動きもなく、しばらくフワフワしていた企画が急に動き出したのは2013年に入った頃だった。

最初に決まっていたのは、¨イイダ傘店の本¨という事だけで、それ以外は白紙というか、自由だった。
そこから、内容、デザイン、写真や構成などを決めて、実際に撮影し、文章を入れ込み、ページをデザインしていったのは実質半年。関係者みんなが本気で過ごした怒涛の2013年が詰まった1冊になった。タイトルの「イイダ傘店のデザイン」というのは、最初から分かりやすく(仮)で呼んでいたタイトルがそのまま採用された形だ。

著者として僕の名前が出ているし、普段からテキスタイルやDMのデザインをしているから、本のデザインも自分でやっていると思われがちだが、デザインは全てデザイナーの仕事で、僕も途中のサンプルページを楽しみにしていた立場だ。彼は僕が信頼を寄せている同級生のデザイナーで、巻末に名前が出ている。

撮影ももちろんプロのカメラマンだが、前から仲良くしている友人で今回初めて仕事を共にした。カメラマンという事は何となく知っていたけれど、普段はドライブをしたり川に入ったりする仲間なので、今回撮影現場を目の当たりにして、改めてプロのカメラマンだということを実感した。

そんな中での僕の仕事は、今までの傘や布にまつわるコメントや文章だった。出版社の方はそれを¨執筆¨と呼び、もうそろそろ僕の人生には縁がないだろうと思っていた¨執筆¨業務を僕は初めてやることになった。よく作家さんがやるホテルに缶詰も経験し、喫茶店やカフェでの執筆活動にも慣れた。おかげで飲めなかったコーヒーが飲めるようになり、スタバの会員にもなってしまった。

発売日が決まってからは、それに遅れないようにやり取りはさらに頻繁になり、急ピッチで仕上がっていった。本ができる前に思っていたのは、もし本当に発売される日が来たら、自分の目で本屋で探し、近所のカフェでコーヒーでも飲みながらゆっくり読んでみたいと思っていた。

しかし現実はそんなに甘くはなかった。僕は年に一度なにかの山が終わると胃腸炎になるのだが、経験豊富な僕は倒れるのが事前にわかってしまうベテラン。
「早ければ明日にでも書店に並びそうです。」と連絡を受けて安心したその夜、「早ければ明日にでも倒れそうだな。」と布団の中で、本の発売の楽しみと、やってくる胃腸炎の恐怖とを両立していた。

そうして予定通り全国の書店に本が並んだその日、予想通り僕は胃腸炎になり水も飲めずに1日寝込んでいた。自分よりも先に本を手に取る人がいると思うとちょっと悔しい反面、嬉しさもこみあげてきたが、何よりも現実は胃が痛いのでそんなことを考える余裕はほとんどなかった。
ただ、本を作っていた頃から「これは終わったら胃腸炎だな」と妥協せず取り組んでいたので、やりきったという事を自分以外の誰か(胃)が認めてくれたようで、ベットの上での激痛に不思議と満足していた。

本のために今までの仕事を整理して気がついたのだが、傘店は早くも9年目、来年は10年となる。今までの傘店の初期段階の仕事が本になり、少し一区切り。特別新しいことはしないと思うが、次のステップというか、続けていくためにまた何か新鮮な気持ちでやっていきたいな、と思う。

もし本を読んでここを読んでいる方がいたら、とても嬉しい。ありがとうございます。
本の存在すら知らなかった方へ向けて、巻頭の¨はじめに¨を転載します。
もしよかったら、本屋で探してみてください。


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はじめに   (「イイダ傘店のデザイン」より抜粋)


傘に興味がなかった僕が、自分で染めた布の表現の仕方として、偶然なんとなく傘にしてみたのが僕と傘の出会いだった。「どうして傘を作ろうと思ったんですか?」とは、うんざりするほど質問されているが、うんざりしてしまう理由の1つは、どうしてか自分でも思い出せず上手に答えられないからだろう。

だんだん傘にも興味を持ち始め、こんな感じの傘があったらいいな、と想像するようになっていった。まずはいい傘を知ろうと、世の中の専門店や傘を見て歩いた帰り、日が暮れた渋谷を歩きながら「僕がイメージしているような傘が世の中にはないんだ」と、ネオンで明るい夜空を見上げて思ったのが、¨傘¨を自分の中にさらに深く意識するようになった最初の記憶だ。10年くらい前だろうか。

頭の中にある¨こんな感じの傘¨は、いくら言葉で話しても人には伝わらず、とはいえ自分ですぐに傘にすることはできず、「どう?こんな傘!」と心の中で叫びつつ、もやもやした気持ちを抱え、家にある傘を分解してどうにか形にできないかと手を動かした。

今ではそれが少し形になり展示会も開催すようになったが、作家のような活動のため
¨こんな感じの傘¨はまだまだ一部の人しか知らない。この本を通じて、少しでも多くの人に僕の作った傘を紹介できれば嬉しく思う。どう?こんな傘。
売りたいわけではないので、使う使わないお構いなく、「こんな傘、楽しいね」と思ってもらえたら、作家として本望である。

子供の頃に、お気に入りの傘をもった時の「雨、降らないかな?」あの心躍る感じ。
赤い傘?青い傘?僕は黄色い傘だった。そんな感覚が記憶の彼方に残っている方も多いと思う。久しぶりにそんな感覚を思い出して、ページをめくってもらえたら。

飯田 純久
イイダ傘店

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